日本スポーツ少年団「少年スポーツ情報誌」からの抜粋
「勝つ」を追求することと勝利至上主義との違い
リトルリーグ(小学生)のチームは、年毎に戦力ががらりと変わりますので、今年はどんなチームが台頭してくるのか楽しみですが、昨年、全国選抜大会で優勝した宇都宮リーグは、大いに注目したいと思っています。栃木県はリトルリーグの人気がなく、県内に2チームしかありません。そこから、全国制覇のチームが出たのですから、何かあるはずです。
監督は宇都宮南高校の甲子園球児で、東都大学リーグでも野球を続けていました。指導者としては申し分ないキャリアです。勢い、技術指導に力が入りそうですが、監督は「この時期は子どもが野球を好きになってくれればいい」と言います。また、チーム作りにも、コーチや保護者の意見、アイディアを積極的に取り入れています。当然、監督なりに高度の目線は持っていますが、「それは、口に出さないようにして」、子どもたちのやる気を引き出すことに傾注してきました。
チームのモットーは「勝つ」です。練習試合でも、勝つことを目標にしてきました。けれども勝利至上主義は、監督の本意ではありません。ただ、敗戦から学ぶことができるのは、大きくなってからで、「子どもは勝つことによって伸びる」という信念を持っているのです。「悔し涙が向上心につながるのは、大人も子どもも一緒です。」もう一つ、監督が掲げるのが「トライ」です。足が遅い子どもにも「盗塁しなさい」、非力な子どもにも「ホームランを狙いなさい」と声をかけるそうです。なぜなら、彼らは、自分でも気づかない可能性を秘めているからです。「子どもが伸びる可能性を大人が邪魔するのは、罪です」